あ、ごめんどこまで進んだ?
カエサルの台頭だな
彼は共和政ローマの核たる元老院の力を削ぎ落としていった
その後も明確に独裁を意識して権力の集約を行っていったのだが…
BC44、私は暗殺によって排除されてしまうんだよ
言ってみれば共和主義者の残党どもの…最後の時間稼ぎだな
(そのフレーズ使ってみたかったんですね分かります)
暗殺の主体は元老院派で、実行犯には私の部下も含まれていた
この場面が描かれた戯曲「ジュリアス・シーザー」は有名だな
これは古代ローマに関する知識があれば、さらに深く楽しめる作品だ
ちなみにこの作品の主人公はカエサルではなくマーカス・ブルータス
彼はカエサルにとって部下であり戦友、だが最後にはその命を奪う暗殺者となる
腐女子にとって、これはかなりオイシイ設定じゃないかね?
なるほどー…両性愛が尊重された時代ですしね…ってオイ
読者が元々そんな話だと誤解したらどうすんだ!
シェークスピアぶち切れだよ!
さて話を戻そう
共和政の灯を消すまいと必死だった者…名誉欲にかられた者…
想いは様々だっただろうが、ともあれ彼らの手によりカエサルは倒れた
私は遺言で一人の後継者を指名していた
紹介しよう、彼がその後継者だ
カエサル直々の紹介なんて光栄だなぁ
よろしく、僕がガイウス・オクタウィウス・トゥリヌス(BC63~AD14)です
あ、読者の方々もよろしくお願いします
アウグスじゃん
名前違うけど
彼は私の養子にあたる
私の暗殺事件が発生したこの時、まだ弱冠18歳だった
でもあのユリウス・カエサル直々のご指名でしたからね
ちなみに以後はガイウス・ユリウス・カエサル・オクタウィアヌスと名乗ります
今回もアウグストゥス入ってねーじゃん
ていうか名前カエサルとほとんど一緒…
受験生キレるだろそれ
なるほど「キレる18歳」ですか
僕の年齢ともかかってるし…いや上手いこと言いますね
いやそれほどでも…って
えらく軽い感じだけどコイツ大丈夫なの?
後継者的な意味で…あとキャラ設定的な意味で…
カエサル直々のご指名だった僕はその人気も引き継ぎました
幸運にもすんなり側近や配下の軍団兵の方々に受け入れてもらえて
後継者としてカエサルの葬儀を執り行ったことも大きかったですかね
私の残した遺産、軍団兵や市民の人気を掌握した手腕は見事だったな
借金をしてでも兵士の給料を払い、市民には一時金を給付する
金の使いどころと人の使い方を心得ている
平民、すなわち兵士は力ってことね
そのへんは一応ちゃんとしてたんだな
そういうわけで名実共にカエサルの後継者となったわけです
まず僕は元老院派の重鎮キケロからの懐柔を受けてこれに応じます
初っ端からどのへんがカエサルの後継者やねn
まぁ落ち着いて下さい
支援してくれるって言うんだから断ることもないでしょう
実際キケロのおかげで僕は19歳の若さで元老院議員になれたんですよ?
(いやそれにしたっていきなり親のカタキみたいな相手と…)
キケロをはじめ元老院派は平民にそっぽを向かれた状態だからな
貴族だから多少の私兵はあるが、平民派貴族たちと比べると格段に劣る
若造を手懐けてそれらに対抗しようとしたわけだ
ついでにこの時、元老院議員一年生なのに軍団指揮権を頂きます
そしてすぐに二人の執政官の下に付いて出兵させられました
キケロさんもどうしてなかなか人使いが荒いですよね
この出兵は平民派貴族アントニウスの討伐だった
平民派貴族の同士討ちがキケロの描いたシナリオだったんだな
ただこの戦いの最中に司令官たる二人の執政官が戦死してしまう
(戦死…? 同時に二人とも…?)
元老院はさすがに19歳の彼に全軍の指揮権を委ねることはしなかった
そこで新しい執政官を選んで派遣しようとするんだが…
いやはや上官を失うなんて、僕にとっても不幸な事故でした
ただ後から他の人が出てきて手柄横どりするなんて反則ですよね
現地に僕というこれ以上ない適任者も居るのに
彼に自分を執政官に選ぶよう元老院に迫るんだ
困った元老院は、とりあえず彼にアントニウスへの攻撃命令を出す
だが彼は再三に渡る攻撃勧告を悉く無視し、あげくの果てに兵を引いてしまう
無視ってお前そんな…
たかが元老院議員や一年限りの執政官と比べられては困ります
僕はあのカエサルに後継者として指名された男ですよ?
当然軍団兵も僕の指示に従ってくれましたしね
それどころかローマに逆侵攻をかけてこれを完全に制圧してしまうんだ
そのローマを守るべき軍団は彼の手にあったからな
だから最初から僕を執政官にしとけって言ったのに
僕も出兵当初から逆侵攻しようとまでは考えてなかったんですよ?
ただまぁ流れで、こればっかりはしょうがないですよね
お前しょうがないって…そんなあっさり…
彼はこの時、軍事的圧力と市民の人気を背景に執政官職を手に入れる
正式な指揮権を後から手に入れてしまったわけだな
さらには直前の討伐対象であったアントニウスと手を組む
僕はただ元老院のお偉方に命令されて行ってただけですからね
そんなに本気でアントニウス倒したかったわけじゃないですし
そして二人でキケロを含む元老院派の大部分を粛正するんだ
この時アントニウスの怒りは凄まじいものだったらしいぞ
なにせ直前まで討伐されかかってたわけだからな
僕も最初からキケロを殺そうとまでは考えてなかったんですよ?
彼は役に立ってくれていましたし、まだ利用価値も十分に
ただアントニウスの手前、こればっかりはしょうがないですよね
(この子ひょっとして天然さん…?いやなんかおかしい…)
彼は引き続き平民派貴族たちと一緒に元老院派の残党を叩く
それが終わったら次はアントニウスら他の平民派貴族
彼はその全てを制圧して一世紀に渡るローマ内戦を終わらせたんだ
まとまった軍事力持った政敵が居なくなっちゃったんですよね
元老院も大人しい人ばっかりになっちゃったし
とりあえず内乱終了ってことで本来の共和政に戻しますか
あれ…?
独裁目指してたんじゃないの…?
元老院の先生方も喜ぶしそれでいいじゃないですか
非常事態用に与えられてた特別権限も返還して…っと
あら有難う
権力志向の人だと思ってたんだけど違うのね…
いやいや大変な誤解です
僕は最初から先生方の味方です
共和政ローマの守護者として尊敬し常に目標にさせてもらってます
それは光栄だけど…でも前に元老院の強硬派を粛正してたじゃん
あれものすごい怖かったんだけど…
粛清はアントニウスの独断です
僕も大恩あるキケロを助けるために手を尽くしたのですが…
思えば最後までその身を共和政ローマに捧げた立派な方でした
じゃあさじゃあさ、頼み事とかもしちゃってもいいのかな?
最近辺境ゴタゴタしてきててさ…
そっちに軍団回してもらいたいんだけど…お願いできる?
もちろんです、兵士に言う事聞かせるくらい訳無いですよ
それより先生方は安全な地域の属州管理だけやるってのはどうですか?
危険な地域の総督に任命された上に軍団の管理となると面倒でしょう
安全な地域の総督に赴任してキャリア終わらせられるってことだよね?
そんなに楽させてもらっていいの?
そりゃそういう風になるなら万々歳なんだけど…
代わりに他の危険な地域の総督は僕が決めちゃっていいですか?
駐留する軍団の管理も必要だから兵士からの人気も必要なんですよね
となると僕が人選したほうがまとまりやすいっていうか
ん…まぁ危ないとこお願いするんだしそれくらいはいっか…
なんかこのままだと危険な地域だけを押し付けたみたいで悪いしね
とまぁこういう風に彼はローマ全軍の一元管理を行うことに成功するんだ
ハッ
執政官としての軍団指揮権、駐留軍を持つ属州総督の任命権
すなわちこれはローマの全兵卒をその統帥下に置くということだ
というかいつの間にか元老院議員の役させられてたんですけど…
圧倒的な軍事力と民衆支持を背景に、彼はその後様々なものを手に入れる
称号、役職、権利…権威や権力を高めると考えられるもの全てだ
「計画通り」だな
それら全ては共和政に則った合法かつ正式な手続きで進められた
それら全ては元老院を通じ賞賛や感謝の言葉と共に僕に送られた
ざわ…ざわ…
そろそろ新しい名を名乗っていいかな?
余がインペラトル・カエサル・ディウィ・フィーリウス・アウグストゥス
帝政ローマ初代皇帝…すなわち新世界の神だ!
第十七話「○○が好きだと叫びたい」
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