まずは自己紹介させてもらおうかな
私の名前はペリクレス、アテナイ(アテネ)の政治家だ
「ギリシャの王様」じゃなくて?
このギリシャの地は紀元前8世紀頃から急速な成長を遂げた
都市国家としてはアテナイやスパルタが有名だな
先程政治家と称したのは、アテナイが直接民主政体を採っていたからだ
へー…てっきり王様やお貴族様が幅利かせてんのかと
都市によっては王政だし、アテナイも元々は王政や貴族政だったんだがな
簡単に言うと市民が皆裕福になってしまったのだよ
そして全員がある意味貴族と言えるような存在になってしまった
全員貴族て…平民無しで貴族が成り立つのかよ
まずここで言う市民とは成年男子に限られる
都市国家とはその市民の家族と奴隷によって形成されているわけだ
ギリシャ市民は労働を蔑み、それらは女性や奴隷によって賄われた
働きたくないでござる
ギリシャの国民性はこの時期に端を発しているのかもしれないな
近年発生した財政問題からも、その一端を窺う事が出来るかもしれん
ハハハ、いやこれはなかなかに興味深い話題だ
奴隷の代わりに外国からの借金で賄ったとか笑えねー…
それはさておき、この市民諸君はただのニートだったわけではない
都市国家間の戦争や他国の侵略の際には彼らは軍人となる
更に直接民主政体を維持する上で、彼らは政治家の役目も担った
まー最低でもそのくらいやってもらわんとな
模範的な市民の日課はまずギュムナシオン(gymnasion)に通う事だ
ジムの語源でありギリシア語の「gymnos=裸の」に由来する
これはレスリングやボクシング、球技等の総合練習・競技場だ
毎日ジム通い…どこのセレブですか
入浴施設や各種の文化施設もあるし、学校のようなものだな
都市ごとに何箇所か設置されて全て公費で運営されている
男たちはみな裸で体を鍛え、汗を流し、そして愛を育んだ
…なんですと?
古代ギリシャの男性は皆、現代で言うところのバイセクシャルだよ
これらは少年愛、より正しく表現するなら青年愛的な傾向が強い
スパルタは特に厳しい都市として有名で、法制度で同性愛を義務化していた
年少者は年長者を、立派な肉体と精神を持つ戦士として愛する
年長者もまた年少者を愛し、その若者を心身共に一人前に育て上げる
これはギリシャ起源というわけでなく、世界的に見て広く存在している
まー日本にもあったな…
俗に「ギリシャ彫刻のような肉体」という言葉もあるだろう
あの彫刻とて伊達や酔狂で彫っているわけではない
君の持っているアルター「中野梓」制服verと同じようなものだよ
美少女フィギュアと一緒にしていいのかよ…
つか持ってねーよ全然持ってねーよ!
これはある男たらし(?)が当代一の美青年を落とした口説き文句だ
「人々は、君の肉体の美しさを賛美する。
だがぼくは、君の外見の美しさではなく、君の魂を愛しているのだ」
メモメモ…キャバクラのねーちゃんに使ってみるお…
この男たらしの名前はソクラテス
確かに魂におけるその本質は、肉体の美醜・男女差共に関連がないな
しかしこの言葉は肉体の美しさを否定するものではないので注意が必要だ
ソクラテスさん何やってんすか…
ペリクさんも何で乗っかって語ってんすか…
ソクラテスから始まってプラトン、アリストテレス…
これらの偉人で有名な哲学という分野は、最初の学問といってもいい
物事を定義しつつ知識を体系化する作業はここから始まった
ギュムナシオンには講義室・図書室・談話室が設置されている
男たちはみな裸のまま様々な事を学び、語り合った
人文、自然、社会科学…全てはここでハッテンしていったのだ
先生、変換間違えてます
「レスリングで体を鍛え、汗を流しながらその美しさを愛でる
共に学問を修め哲学を語り、愛する人のような立派な戦士を目指す」
予備知識があればレスリングシリーズの面白さも一段と増すだろう?
先生がレスリングシリーズ好きなのは分かりましたから…
ネタ分からない人も居ると思うのでそろそろその辺で…
こういった環境の下、古代ギリシャは様々な分野で劇的な進歩を遂げるんだ
現代でも当時のギリシャに端を発するモノを挙げればキリがない
もちろん当時の周辺諸国にも多大な影響を与えている
当時ぶっちぎりの最先端だったわけだな
とりわけ地中海沿岸への浸透は早かったな
ギリシャ人は交易がてら沿岸に多数の植民都市を作っている
これらの都市から地中海全域にギリシャ文化が伝わった
ヘレニズムという言葉を聞いた事があるだろう
これはオリエントの言葉なんだが、「ギリシャ風の」という意味だ
例えば仏教は元々偶像崇拝の概念など持たなかったのだが…
ギリシャ彫刻の影響ですか…
釈迦がガチムチ推奨してなくてよかった
何故だ?
君は鍛え上げられた肉体を美しいとは思わないのかね?
仏像が全部ガチムチとか嫌だろjk…
俺は今の日本の雰囲気が好きなんだよ
話を戻して、建築でもアルテミス、ゼウス、パルテノン、マウソロス、ロードス
これら全てが古代ギリシャの遺産と言っていい
アポロ神殿は巫女が神託を得るための神殿だな
各都市国家間に共通するのは前述のような文化やギリシャ神話だ
これを元に、利害で対立しつつも一定のシンパシーは存在する
ただ恥ずかしながらギリシャは内部抗争の激しさに定評があってね
哲学とかやってりゃ余計にそうだろうな
ギリシャの諸都市は滅多な事では足並みを揃えないんだ
ただ磨き上げた文化ゆえにプライドの高さにも定評がある
ペルシャに攻め込まれた時なんかにそれが発揮された
ペルシャってダレイオスんとこだろ
確かものすごい大帝国だったような…
その通りだ
この時ばかりはギリシャ内部抗争がピタリと止まる
連合軍を結成してペルシャの侵攻を食い止めるんだ
そりゃすげぇわ
国の大きさで言うと比べ物にならんのに
そうでもないさ
和平結んで一段落したらまた内部抗争だからな
ペルシアもそれを誘発させて共倒れさせる作戦に切り替える
筋金入りだなギリシャ人(肉体的な意味でも
ペルシャの作戦にも乗せられて、延々内輪揉めに明け暮れていた
次回はそんな時代のギリシャが生んだ超弩級DQNを紹介しよう
(ちょうどきゅ………これ読者も読みづれーだろ)
第十一話「それなんてまんが大王」
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