AIの宣戦メカニズム

Fanatics'抄訳/AIの宣戦メカニズム
Last-modified: 2013-12-15 00:03:14

AIの宣戦メカニズム

http://forums.civfanatics.com/showthread.php?p=6806299#post6806299
3.17時代の記事。記事の投稿者はCiv4のプログラムを解析して結論を出したとの事。以下抄訳。

Niklas May 10, 2008, 09:25 AM †

AIはいつ戦争を始めるか

AIの開戦理由は2種類ある。1つは外交的理由、もう1つは戦略的理由である。

外交的理由による宣戦は2種類ある。1つは貢物の要求が拒否された場合、もう1つは他国から参戦要請を受けた場合である。

戦略的理由による宣戦は3種類。ただしどれも同じような計算方式を用いる。
・全面戦争
・限定戦争
・便乗参戦

戦争中または戦争準備中でなく、財政危機にも陥っていないAIは、毎ターン開戦判定ロールを行う。最初に全面戦争ロール、結果が否なら限定戦争ロール、それも否なら便乗参戦ロールを行う。全て否であれば戦争準備には入らず次のターンに進む。

全面戦争

1)そのAI指導者のiMaxWarRand値を最大、0を最小とするダイスを1つ振る。0が出れば開戦を考慮する(決定ではない)。なおこのロールで0が出た場合、考慮の結果いかんに関わらず、そのターンの限定戦争と便乗参戦のロールは行わない。

2)次にそのAIの戦意をダイスロールで決定する。0から99までの値がランダムに生成され、高いほど開戦に積極的になる。このロールは1ターンに1回だけ行われ、全ての判定に同じ値が用いられる。

3)続いて誰に対して宣戦するかを決定する。この過程はA・B・Cの3段階に分かれており、どこかの段階で相応しいターゲットが見つかれば以後の段階は省かれる。

A)最初の計算では隣接する国のみに対して開戦考慮が行われる。何を以って「隣接」とみなすかは、AI指導者のiMaxWarMinAdjacentLandPercent値を参照する。これは指導者によって0~4の幅がある。当該国国境全長の内、この値のパーセントが対象国と接していれば「隣接」とみなされる。0の場合、陸路で到達可能でありさえすれば隣接扱いになる。

B)最初の計算で相応しいターゲットが見つからなかった場合、陸路で到達可能な国全てを対象として再度計算する。孤島の文明は他国全てを対象とする。

C)それでも相応しいターゲットが見つからなければ、他文明全てが計算の対象となる。

4)AIの戦意(0~99)と「態度による宣戦しにくさ」を表すNoWarAttitudeProbを比較する。後者が上回っていれば対象国は開戦ターゲットにならない。(訳注:NoWarAttitudeProbは指導者ごとに定められており、対象国への態度が良いほど大きい数字になる。たとえばモンテスマの場合、「警戒」で30、「満足」で80、「友好」で100)

5)対象国との戦力比を考慮する。プロセスAとBではiMaxWarNearbyPowerRatioを、プロセスCではiMaxWarDistantPowerRatioを自国の軍事力に掛け、対象国の軍事力と比較する。積算の結果が相手を上回らなければ、AIはその国をターゲットにしない。(訳注:つまりiMaxWarNearbyPowerRatioとiMaxWarDistantPowerRatioが大きいほど自国戦力に自信を持つということ)

6)上記の計算全てを通過した国があれば戦争準備に入る。ターゲット候補が複数の場合、以下の計算で実際のターゲットを決定する。
・対象国に隣接する領土のタイル数×4を計算する。
・両国の首都同士の距離(タイル数)を計算する。別の大陸なら1.5を掛ける。(訳注:書き間違いの可能性あり。首都が離れているほど宣戦されやすい?)
・上の2つを加算し、対象国への態度が「友好」なら1、「満足」なら2、「警戒」なら4、「苛立」なら8、「激怒」なら16を掛ける。

上記計算で最も高い値を得た国がターゲットである。


限定戦争

全面戦争が発動しなければ限定戦争の判定に入る。計算方式は全面戦争とほぼ同じだが、宣戦考慮の対象になるのは隣接する国のみである(孤島の文明も隣接扱いになる。また自分が孤島にいれば全文明が隣接扱いになる)。また判定に用いられる値も少し異なっている。

1)iMaxWarRandの代わりにiLimitedWarRandを用いた開戦考慮ロールを行う。全面戦争に比べてハードルはかなり低い。

2)限定戦争では戦意が-10される。つまり友好的な国に対してより宣戦しにくくなる。

3)ABCの3プロセスではなく隣接国のみに判定を行う1プロセス。

4)態度判定。戦意が-10される以外は全面戦争と同じ。

5)iLimitedWarPowerRatioによる戦力判定。iMaxWarNearbyPowerRatioより高い指導者と低い指導者がおり、明確な法則性は見出せない。

6)ターゲット候補が複数の場合の計算は全面戦争と同じ。


便乗参戦

全面戦争も限定戦争も発動しなければ、既に起きている戦争への便乗が判定される。計算方式はほぼ同じだが用いられる値が少し異なる。

1)iDogPileWarRandによる開戦考慮ロール。この値は100、50、または25とかなり低い。エリザベスのように全面戦争や限定戦争の敷居は高いが便乗参戦には積極的という指導者もいる。

2)便乗参戦では戦意が-20される。つまり友好的な相手に便乗宣戦することは稀である。

3)1プロセスのみ。陸路で到達可能かつ現在戦争中の国が判定対象になる。

4)態度判定。戦意が-20される以外全面戦争と同じ。

5)戦力判定。対象国の戦力×1.5<対象国の敵と自国の戦力合計なら判定成功。指導者の性格による差はない。

6)ターゲット候補が複数の場合の計算は全面戦争と同じ。


論理的帰結

戦争を避けるには2つの方法がある。1つは十分に好かれること。もう1つは十分な戦力を持つこと。ただし後者に関しては閾値の概念を理解する必要がある。つまり、自分の戦力が相手AIに脅威を感じさせるレベルに達しない限り抑止効果は皆無なのだ。またこの閾値は比較的高く設定されており、最も低い指導者でも80である。従って、どのAIの閾値にも達しない程度の戦力しかない場合、友好関係による抑止が唯一の手段になる。

良い外交関係は優れた戦争防止手段である。態度が「友好」になれば宣戦される心配はない(貢物の拒否と参戦要請による場合は別である。詳しく調べてはいないが、外交を通じて「友好」国に宣戦させられるかもしれない。例えばエカテリーナなど)。また「満足」を保てれば便乗参戦を完全に防ぐことができ、限定戦争の可能性は非常に低く、全面戦争の可能性も20%に低下する。ところが「警戒」になると状況は一気に悪化し、指導者によっては戦争可能性が70%になる。他国に「警戒」されている状況はかなり危険と言えるだろう。

また興味深いことに、ターゲット候補が複数の場合の優先順位計算においては軍事力が全く考慮されない。影響するのは地理と外交だけなのだ。つまり自国の戦力が完全にゼロであったとしても、その地域で最も旨みのある土地を持っていなければ安全に暮らせる。また世界遺産の有無も開戦判定に全く影響しない。どれだけ遺産を作ろうと、それによって他国から狙われる心配はないのだ。